由緒縁起 |
快林寺は島田市役所に隣接した都市寺院の代表ですが、寺伝では、開創当初は真言宗慶寿寺末として、野田の山近くの元島田にあったといいます。
慶寿寺は今川二代範氏が貞和元年(1345)真言律宗の京都泉湧寺十二世朴艾思淳師を開山として招き、大草に創建されました。今川家の庇護を受け降盛を誇りましたが、天文5年(1536)の花倉の乱や、その後の今川家の衰退に伴って荒廃しました。快林寺も同様に無住寺院となり荒廃していたのを憂慮したのは、地元の人々と静居寺僧堂で修行していた雲彩慶曇師でした。慶曇師は天正4年(1576)、人々の先祖供養と禅の教えを広めるために、快林寺を曹洞宗に改宗し、寺を現在の幸町に移して伽監整備を行い、師の琴峰寿泉師を御開山に招き再興した、と『島田郷土史』(紅林時次郎)に記されています。
江戸時代に入るとまもなく島田宿は天領となり、慶長9年(1604)の大洪水で荒れた宿場町も、その後の治水工事や宿場の人々の努力で復興しました。天領島田宿の初代代官として島田陣屋代官に就任したのは、徳川家康に仕えた後、島田市野田に居を構えていた長谷川藤兵衛長盛でした。元和2年(1616)、長盛が島田宿の代官拝領屋敷に転居するに伴って、快林寺も屋敷のすぐ横に移転したと、『島田史跡案内』に記されています。移転についてはこのような二説があって定かではありませんが、いずれにせよ移転後の快林寺は宿場寺院として発展してきました。
快林寺には明和7年(1770)から天明8年(1788)まで、陣屋代官を務めた岩松直右衛門・主税父子の墓所があり、宿場の人々の先祖供養ばかりでなく、街道を往来する旅人の参拝もあり、文人墨客も訪れたことでしょう。本堂西側の観音堂には、千葉山智満寺の千手観世音菩薩と同じ一本の木から作られた三体のひとつと言われる千手観世音菩薩が祀られています。この観音様は江戸時代駿河秩父観音霊場の第九番の札所として有名で、多くの参拝客がありました。また街道を上下する旅人も道中安全を祈ったことでしょう。
~霊場御詠歌 「めぐりきて その名をきけば明智寺 心の月は くもらざるらん」~
大井川の川止めで宿場の旅籠が混雑すると、快林寺・法幢寺・福泉寺・林入寺・長徳寺の五ヶ寺は、応急の宿泊所としての役を担い、旅人の便をはかりました。
安政2年(1855)の地震、明治24年(1891)の濃尾地震、大井川の洪水、明治8年、隣接の島田郷舎(後の島田第四小)の全焼等の災害をくぐり抜けてきた快林寺も、講堂が老朽化して来ました。十四代笑庵大悟師は、檀信徒の浄財喜捨により明治25年(1892)、観音堂を再建、さらに明治33年(1900)には本堂の再建、この本堂と観音堂は戦時中米軍の空爆の難を逃れ、今なお威容を誇っています。
十五世大善智道師の代になると戦争をはさんだ発展の中で、快林寺も新たな発展を迎えました。
昭和19年(1944)には寺経を上げ、法事や寺の行事等、すべての教食活動を主体的に行うようになったのです。戦後になると幼児への仏教精神による教育の大切さを考え、昭和25年には島田中央幼稚園を境内に設立、(平成4年、旗指に移転)これを受けて十六世大儀友康師も、昭和46年(1971)、伊久美幼稚園を設立、さらに十七世大林泰弘師も平成19年(2007)にみどり幼稚園を設立し、園児教育の充実を図りました。また戦後の世の中の発展に伴って、次々に伽藍改修や境内整備に着手したのです。
昭和41年、本堂屋根替、昭和49年、庫裡改築、平成5年、墓地改替境内地整備、平成8年、位牌堂と客殿新築を果たし、面目を一新、また、曹洞宗で新たに梅花流が設立されると、昭和41年には快林寺梅花講を設置し、梅花観音第九十六番札所霊場を設けました。
平成15年には永代納骨堂も完成し、快林寺は島田の町の中心寺院として整備され、多くの人々が集う寺として発展しています。 |
|
歴代住職 |
開山 |
琴峰寿泉大和尚 |
天正15年5月16日(静居寺三世) |
初代開基 |
雲彩慶曇和尚 |
年号不明 4月4日 |
二代 |
名夾慶誉和尚 |
慶長5年11月29日 |
三代中興 |
名岩宗誉和尚 |
正保3年7月14日 |
四代 |
通国宗達和尚 |
寛文9年9月24日(静居寺過去帳四巻に四代とあり) |
(丈峰和尚 梵鐘銘にあり 以下不明) |
五代 |
普山賢達和尚 |
元禄3年5月29日 |
六代 |
鰲山通在和尚 |
元禄4年5月23日(静居寺過去帳四巻に五代とあり) |
七代 |
譲翁訓益和尚 |
元禄8年4月20日(静居寺過去帳四巻に六代とあり) |
八代 |
道耘老牛和尚 |
宝暦4年5月7日 |
九代 |
蒿山角祥和尚 |
延亨2年4月10日 |
十代 |
興歓即宗和尚 |
寛政5年1月4日 |
十一代 |
義道岱林和尚 |
文政6年2月13日 |
十二代 |
大心道堅和尚 |
文久2年10月20日 |
十三代 |
麟端霊然大和尚 |
明治2年4月7日 |
十四代重興 |
笑庵大悟大和尚 |
大正3年9月6日(愛知県般若寺住職) |
十五世 |
大善智道大和尚 |
昭和36年10月30日 |
十六世 |
大儀友康大和尚 |
平成11年1月4日 |
十七世 |
大林泰弘大和尚 |
令和元年11月25日 |
|
|
静居寺五百年史(静居寺五百年史編纂委員会)2010年 |